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第11話 フェルゼン北国へ去る

(1775年頃・オスカル満19歳)

 民衆の期待を背負った内気な新王。中身は子供なのに権力だけを手に入れてしまった女王アントワネット。
何でも自由にできると、無邪気に喜ぶ彼女の姿が後の不幸につながると思うと、見ているこちらは素直に喜べない。

 王妃になったアントワネットのお声掛かりで、オスカルは近衛連隊長、大佐に昇格した。白の軍服から赤に変わり、嬉しくてばあやが大騒ぎするのだ。
だが裏腹に、好きな人にはどんどん貢ぐアントワネットの思慮のなさがオスカルには不安の種だ。ばあやのように浮かれる暇もない。
 自分の感情に素直すぎるアントワネットと税金の無駄遣いを憂うオスカル。その横でなぜかお気楽なアンドレ(しばらく見ない間にアンドレは成長している)。

オスカルを喜ばせようと昇進させたのにそれも裏目に出、フェルゼンも来ないし、王妃になったとたん何だか寂しいアントワネット。気まぐれで謁見を断ったり、フェルゼンだけには謁見したりと、相変わらず勝手気まま。
彼女の我がままを指摘するド・ゲメネ公爵は横暴だけれど、筋は通っている(でも通路にいるオスカルが邪魔だからといって、胸を触るなんて…)。

 フェルゼンもアントワネットにメロメロで、いけないと思いつつ彼女の言いなり。さすがにアントワネットの付きのノアイユ夫人までが二人の仲を怪しみはじめているし、メルシー伯もアントワネットの我がままに弱り果てている。

 王妃の責任を感じていないアントワネットの為に、ついにオスカルはフェルゼンの元を訪れ、彼に祖国へ帰れと言う。
だがオスカルに言われなくとも彼はわかっていた、このままではいけないと。
 ところでこの別れの後、4年後に再会したオスカルはいきなりフェルゼンにハマっていた。この別れの場面からは、オスカルはフェルゼンに対して恋心を抱いているようには見えない。こんなにもアントワネットに骨抜きにされ、浮ついたフェルゼンにいつ、どんな訳で恋心を抱いたのだろうか。どちらかと言えば、辺り構わずいちゃいちゃしていた二人を冷静に見ていたと思うのだが…。伏線はどこだ?

 そしてオスカルはフェルゼンに聞かれている。
「お前、寂しくないのか…女としての幸せも知らずに」と。
オスカルは自信をもってそんな事はない、今のままで幸せだと言い切っている。本気だろうか、強がりだろうか?
19歳のオスカル。そんな自分でも考えたことのない事、でも、どこか避けていた事をズバッと指摘され「ああフェルゼン、お前は余計な考え事を一つ増やしてくれたな」と、心にクサビでも打ち込まれたのか?
 ところでフェルゼンはそう言うが、アントワネットは女としての幸せをつかんでいるというのだろうか。彼女は愛のない結婚をしているし、女が女として育っていても必ずしも幸せではないのだ。

 さて、舞台は変わって、財布を盗もうとした子供を打ち殺すド・ゲメネ公爵。
子供をかばおうとしたロザリーと、たまたま馬車で通りかかったオスカルとアンドレは一瞬の出来事に衝撃を受ける。
怒りの余り飛び出そうとするオスカルをアンドレが押さえる。激怒して涙を流すオスカルと冷静なアンドレ。

貧困、身分差、命の軽視、オスカルはまた一つ現実を知り、この社会の不完全さを純粋に怒る。

 その夜、フェルゼンはひっそりと、故国スウェーデンに帰って行く。




2000.7.14.up