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第29話 歩き始めた人形

(1788年4月オスカル満32歳)

 最初、このタイトル聞いたときはちょっとショックだったっけ。
オスカルというキャラをこういう風に捉えるって事自体、思いも寄らなかった。
でもふと思う。誰でも育つ上で、親の思い入れや社会的なことなどを刷り込まれた人形だったんじゃないかと。
そしてある時、自分が人形であることに気付き、人の世を知る。人形だった過去の自分を経験に生かし、人生への想いを深めていく。
オスカルにもそう言う過程があって何らおかしくないと。
最初からオールマイティーな人間はいない、勇気を出して自分の足で歩き始めることが大切なんだと。
 
 民衆を苦しめ、そしてオスカルを保護していたにもかかわらず、自分を偽らなければならなかった貴族社会。そのあり方に疑問を感じ、そこから離れることが希望だったオスカル。彼女は人から与えられた地位を捨て、自立して自分で道を切り開いて行く。彼女の生きて行くすべは武人として生きること。
義理堅いオスカル、アントワネットより賜った地位を捨てるに当たり、その決心を自分のわがままとして信頼をよせてくれた彼女に詫びている。そして、より男として自分の実力で生きるためには王宮の飾り人形ではなく、一武官としてより激しい任務をアントワネットに申し出る。

 だが、その引き金になった「失恋事件」も、実際フェルゼンに告白したわけではなく、一人自分の胸に収めていた恋心なのだし、正真正銘の恋人同士の別れではない。
彼女が傷ついたのだとしたら男として振る舞う以上は自分が女であることを否定しつづけ、恋愛感情すら捨てなければならなかった事実。

じゃあ、なぜそこまで男でありつづけようとしたかと言えば、やはり14歳の春に決意した自分の生き方を曲げたくなかった。ここまで男として生きて来たことを後悔したくなかった。それは女の気持ちを捨てるほど彼女の中で信条として根付いていたのではないだろうか。そしてオスカルは男らしさを押し付けられたけど、剣も銃も統率力も、外面的な男らしさというものは器用に身につけてしまう。

 男になるか、女に戻るか。アンドレが叫んだように、その時、人生の分岐点でオスカルには二つの道があった。でも彼女は自分に厳しい道を選ぶ。
いくら男と思い込んでいても、ある時、自分は男ではないとわかる時が来たはず。その時、オスカルはありのままの自分を受け入れてもらえていない事に気が付いただろう。
彼女には両親から愛してもらうために、男として育つという条件が伴っていた。彼女はありのままの自分を愛してもらえず、女の部分を抹殺してしまう。

…それに女を捨ててまで軍服にこだわる理由。
少女の時から彼女の誇りとして心にあった武人としての生き方。
彼女は自分が男として育った事、自分が与えられた運命が何なのかという事、それを「武人として生きること」だと答えを出していたのではないだろうか。
それに軍服を着ると気分も引き締まって男らしくなってしまう。制服には、他の者との一体感を呼び、自分の気持ちを強くする作用があるようだ。

 ところで彼女は女を捨てることで安易に問題解決を図るが、まだ自分を見失ったまま。彼女はとりあえず環境を変えることによって自分を探す旅に出たと言ってよいだろう。
また偶然とは言え、飾り気のない本音で生きているアランたちの衛兵隊に配属が決まるとは、そんな彼女に持って来いだったと言えよう。

だが、男になろうとしたのに、皮肉にも衛兵隊では女だからと反発を受ける羽目に。
どこへ行っても彼女には女だからという不利な手かせ足かせがついてくるが、衛兵隊ではオスカルは、はじめから女として認められている…と言うより最初はナメられているのだ。反発が多いのもその証拠だ。
さて、隊をまとめる隊長としてのオスカルの采配が今回から描かれる。

 オスカルの突然の衛兵隊転属を、父は不審に思っている。だが、彼もかなり人間が丸くなって来たのかオスカルを平手打ちすることもなく、社会人として既に一人歩きしている娘に対して、熱血オヤジさながら激怒することもない。

 ジェローデルはオスカル隊長の心変わりに戸惑い、下品な隊への転属に納得がいかない様子。彼も優しい男である。

 アンドレはオスカルに避けられ、好きなことを自由にするがよいと突き放されているけど、オスカルが好き!という気持ちをあきらめられるわけもなし。
お互いに男・女を意識してしまった二人。アンドレの重みを知ってしまったオスカル。もう以前の、幼なじみの二人には戻れない。

 オスカルは冷たい顔をしているけど、彼の気持ちが痛いほどわかっているのであえて離れようとする。
同じように実らない愛に苦しんだオスカルとアンドレ。
二人の心は恋に苦しみ、最低の気分。でも、オスカルの場合は現実に女として振る舞えないやるせない心を慰めようとして、フェルゼンに気持ちを向けただけだと思う。その気持ちは、アンドレが自然のまま彼女を求めているのとはどうも違うように感じられる。

それが正しいかどうかは別として、アンドレのためにと離れて行くオスカルの気持ちも知らず、彼は目の悪化のことも伴い飲んだくれている。
ついにはアコーディオンおじさん(スナフキンを暗くしたタイプ)に慰められる始末。
だが苦悩し続ける彼の心には少しずつ自分の選んだ道が再び闇に浮かび上がったのだろうか。

 心があれば生きて行ける。愛し合うのは心と心…。
そう励まされた彼は、いち早く危機を脱出する。
オスカルを我が手に抱きたいと思い続けたアンドレも彼女の涙にはひるんだ。
光を失う闇への不安と、己を信じられぬ心の闇。その苦難の中、彼は一筋の光を見つける。
「オスカルを愛する心は真実である」と。

彼は自分の信じた道に再び自信を取り戻し、オスカルのそばにいて彼女を見守り続けることを決意するのだ。
(アンドレとこのおっちゃんは今一度だけの行きずりの縁なのだが、この二人、どうやら同じ日に死んでいる。)

 そんな中、酒場で偶然アランに再会したアンドレは、彼らがオスカルの配属先の衛兵隊B中隊であることを知る。さりげなくダグー大佐も登場しているのでチェック。
アンドレはこのチャンスを逃さない。さっそく実行あるのみ、衛兵隊に潜り込む。
オスカルのためなら、オスカルのそばにいるためならと、自分の気持ちにあくまで正直。
 転属の一日前、衛兵隊の兵舎を訪れたオスカル、軍服の色もさりげなく変わっている。以前ならカッコよく全身のアップとかがあったけど、特に等身大の彼女を描きはじめてからは、ヒーロー然とした主人公らしいポーズはなくなった。

 さて、ここが今日の要チェックポイント。
兵舎を訪ねたオスカルはアンドレがそこにいるのに驚く。まさに「ドッキーン!」としただろう。
アンドレは自分の意志で屋敷を出て行き、オスカルの元へ自力で入隊していった。彼はもう従僕ではない。オスカルに何を言われてもひるむどころか自信を持って彼女のそばに居続けて守ることを決意している。
彼のために遠ざかろうとしたオスカルは呆れ顔だが、その実、彼の根性には負けたのだ。

 実らぬ恋から逃げ出したオスカルにとって、彼の行動は無駄としか思えない。
だが、彼は逃げ出しはしなかった。
それにオスカルがアンドレを遠ざけようとしたのも、彼のことを無意識に意識しはじめている自分から逃れているのだろう。
女を捨てるつもりでいたし、本当に対象のある恋愛をしてこなかったオスカルはウブな娘のよう。切り捨てたい、自分の中の女としての気持ちを求められ、彼女は動揺している。

 ところで隊員たちは今度の隊長が女だと知ると閲兵式にも出て来ない始末。
アランはアンドレに貴族の匂いがすると疑い始めているし、アンドレもそれとなく今後の波乱を心配しているが、そんな事でオスカルを助けようものなら余計なお世話と彼女に嫌われるのを知っている。
オスカルはこと、(男らしく)戦うことにかけては誰の助けも借りない。彼女は武人として生きてきたからだ。彼女がアンドレの手を借りるのはそんな事ではなくもっと精神的な面だ。

 結局、力の勝負で閲兵式を行うことになったオスカル、あっさり隊員を倒してしまう。ところでこの隊員(頬傷男)、人というよりはまるで岩みたいにデカい。それを担ぎ上げるアランもすごい。

 アランは女相手に戦うことは信条ではない。仲間を倒されて逆上した隊員たちがオスカルに一斉に飛びかかるのを止めている。
これでアランが隊員から一目置かれている存在なのはわかるが、アランはこの時、オスカルの強さを知ったのではないかと思う。そんじょそこらの隊員が束になっても彼女には勝てないだろうと…。
一体この女は何者なんだと言わんばかりに、アランもオスカルを見る目が厳しい。

 またアランの口から、「衛兵隊の隊員は給料のため、生きていくために働いているだけで、貴族や王室のためではない」と語られている。
彼は自分たちの腹の中を隠さない。貴族なんか嫌いだし、許せないと念押ししているのだ。
オスカルも心得たもので、「わかっている」と、彼らの本音を聞けて妙に納得している。手ごたえあり、さあ来いという感じだろうか。一癖ある男たちに囲まれ、オスカルのこれからの苦労が目に見えている。

 ところで衛兵隊は猛獣みたいな男たちばかりで、本能のまま生きているって感じ。とってもむさ苦しい。隊の統制なんか暴力抜きでは取れてなさそうである。
ひたすら力の勝負、ボスの座を得るためには実力のみ。これってサル山みたい(とは言え、見慣れてくるとだんだん愛嬌が出てくる兵士たち)。
どう見ても日も当たらない不潔そうな兵舎の中で、貴族の屋敷に部屋まで持っていたアンドレがさも平気だったのが不思議である。

 その後でジャルジェ家の屋敷を訪ねてきたジェローデルを見たオスカルは、久しぶりに礼儀正しい部下を見て嬉しそう。とかく近衛隊と衛兵隊では隊員の性質があまりにも違いすぎ、いくら強がっていても自分を認めてくれている部下はかわいい。懐かしくって仕方がないのだ。

 ところが、ジェローデルは部下としてここに来たのではなく、オスカルの花婿候補に立候補したという。オスカルは頭が真っ白という感じか?



2000.12.20.up