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第40話 最終話 さようならわが愛しのオスカル



衛兵隊員たちの目の前で、それは起こった。
誰しもの動きが止まった。
激しい銃撃を受けて崩れ落ち、衝撃で紙のように吹き飛ばされるオスカルの姿。

それでも起き上がろうとした彼女の目に、再び、空を舞う白い鳩の姿が写った。
それはあたかも空からずっとオスカルを見守っているアンドレが、やっと迎えにきたようだった。

「アンド…レ…あぁ…」
オスカルはその愛しい名を口にして、ほほ笑みすら浮かべた。
彼女は直後、完全に力尽き倒れた。頭から血が流れている。
「オスカル様…」
ロザリーは真っ青になっていた。
アランは我に返り、オスカルに駆け寄った。他の者も続いた。

「隊長!オスカル隊長!しっかりして下さい、聞こえますか、隊長!」
アランは声を限りに叫んだ。
オスカルの見開いた青い瞳はもう何も見えていないかのようだった。
頭の傷から幾筋の血が、彼女の顔に伝ってきている。
「大声を出すなアラン…ちゃんと…聞こえている」
いらぬ動揺を他の兵に与えてはならない…オスカルは最後まで指揮官としての冷静な判断を失ってはいなかった。

「…」
それがわかってか、さすがのアランも黙った。
だが今は手当が一番先だ。
「何をしている、みんな!手を貸せ!隊長を安全な場所に運ぶんだ!」
アランは生き残った隊員たちと共にオスカルをかかえて路地へ運んでいった。
今やオスカル隊長の瀕死の負傷により、衛兵隊の統率が乱れていた。
彼らは呆然と攻撃の手を止め、隊長を心配してその様子を見守っている。
が、その隙を狙ったかのように、バスティーユからはパリに向かって容赦のない砲撃が始まった。

ベルナールが路地を抜けたところへオスカルを運ぶように指示した。
しかしオスカルはすでに自分の死期を悟っていた。体から力が抜けていく。そしてこの大事な時に、皆の手を取るわけにはいかない。彼女はアランに声をかけた。
「ちょっと待ってくれ…オスカルが…」
アランは先に急ぐベルナールを制止した。

「…おろしてくれ…アラン…おろして…頼む…お願いだ…と…ても…疲れている…だから5分でいい…静かに休みたい…」
オスカルの顔からどんどん血の気が引いていた。ロザリーはオスカルの剣をしっかり握り締めて、見守った。すでに涙があふれている。
「先生…」
ベルナールは医師の方をちらと見た。
医師は毛布を敷くように言い、彼女はそのまま路地に寝かされた。

オスカルは横たわると、ほっとしたように軽く息を吐いて、目を閉じた。
脈を診た医師はすでに手当をせず、オスカルの顔の血をふき取るように指示した。それは手のほどこしようがないことを意味していた。
涙を浮かべながら進み出たロザリーがその役を買って出る。

オスカルはその時、ゆっくりと目を開けた。
細い路地から見える青空に、さきほどの白い鳩が相変わらずオスカルの頭上を、まるで彼女を見守るようにして飛んでいた。
オスカルはうっすら目を開け、ぼんやりと鳩を見つめた。

…アンドレ…?
生気の失われたオスカルの顔は、すでに死が間近に迫っていることを物語っていた。それは誰の目にも、はっきりとわかった。
「どうした…味方の大砲が聞こえないぞ…撃て…砲撃を続けろ…バスティーユを…落とすんだ…撃て、アラン…撃つんだ…何をしている…」
オスカルはつぶやくように言った。

身も心も疲れ果て、やつれてはいたが、その顔はいつにもまして気高く、美しかった。
アランはこの誇り高い指揮官に、いや、オスカルという女性の生きざまに激しく心をゆさぶられていた。
そして彼女との永遠の別れがもうすぐそこに来ていることも…。
彼の両目に涙があふれて来た。

「元衛兵隊員!全員配置につけ!」
アランは瀕死のオスカル隊長にこの声が届けと言わんばかりに、ありったけの力を込めて叫んだ。
「オーッ!」
隊員たちも答えた。

「撃つんだ…」
オスカルは朦朧とした意識の中で、なおもつぶやいた。
男たちはオスカルの元から離れ、戦列に戻って行った。
アランは途中、一度振り返り、オスカルに対してきびすを正し、敬礼した。

路地から勢いよく飛び出してきた元衛兵隊員たちは再び大砲に取り付いた。
バスティーユからは相変わらずパリ市民に向けて砲撃が続いている。
隊長の分も、死んでいった仲間の分も戦わねばならない。彼らはそう心に決めていた。
アランは帽子をかなぐり捨てた。

「ようし、みんなーっ!撃ちまくるんだー!」
アランの号令で、再び市民側の反撃が再開された。
元々、荒っぽいのが売り物の衛兵隊である。今こそ、その底力を見せる時だ。
隊員たちは雄叫びを上げ、続けざまに大砲を撃ちまくった。
もう、やけのやんぱち、オスカルがいなきゃ指揮も統制も何もあったもんじゃない、ただオスカルの意志に報いるために命がけで、ガンガンと力で押しまくる総攻撃である。

やがて怒りに燃える彼らの攻撃は、ついにはバスティーユの城門を打ち破った。
「聞こえるか、オスカル。味方の総攻撃の声だ」
ベルナールはオスカルを励ました。あなたの部下たちが、あなたの意志をついで戦ってくれていると。
民衆の勝利はもう間違いないだろう。薄れていく意識の中、オスカルには城門を破り、牢獄へなだれ込む市民たちの姿が目に浮かぶようだった。そして同時に、彼女の目の前に、あの夜、アンドレと一夜を過ごしたときの美しい銀河が目の前に広がっていた。

本当にあの時の銀河は美しかった…。

オスカルの目の前は次第に暗くなっていき、蛍がゆらゆらと凪いだ水面を飛んでいた。
蛍たちはやがてオスカルを誘うように光を灯しながら中空の闇の中に一匹ずつ消えて行った。
オスカルはそっと目を閉じていった。
最後の一匹の蛍の光が消えたとき、彼女の最愛の人、アンドレが彼女の目に写った。
彼は優しくほほ笑んでオスカルを見た。

「…ア…デュウ…」
オスカルが静かに目を閉じたとき、医師は彼女の脈を取っていたその細い腕を、そっと横たえた。

長い間の疲労が、彼女の白い顔に、そして瞳を閉じたまぶたに深い陰を落としていた。
…だが、その表情は眠るように安らかだった。
「いやあぁぁぁ!」
ロザリーの絶叫が響いた。


愛すること、誠実に生きること、その苦しみから解き放たれるオスカル。そして今、アンドレの待つ天国に召され、再び光と影は一つになる。民衆の勝利の声を聞くこともなく…。(最終回・予告編より)
1789年7月14日オスカル・フランソワ絶命…そして1時間後、バスティーユ牢獄は降伏の白旗を出す。

ところで、彼女の死を見つめていたテレビの前の私は思わず涙涙なのだが、それにしてもここに出てくる回想シーンが…実のところ…似ていない。鉛筆画のタッチなので、動画との違いとも言えるのだが、どうもちょっと感じが違うのだ。それでもとにかく泣ける自分が情けなくてさらに泣ける。

テロップが流れて、馬に乗った後ろ向きのオスカルが海岸を駆けていく止め絵は、泣けると言うより、悲しさの余り脱力してしまうほどだ。

その後、バスティーユを守っていたド・ローネー侯爵は興奮した民衆たちに殺され、その首は切り落とされたうえ、民衆による勝利の行進に掲げられる(オスカルが見ないでよかったとも言える…)。
民衆側の死者は約100名。
バスティーユ攻撃の済んだその夜パリでは大雨が降り、戦いで流された血を雨が洗っていったという。

さて、バスティーユでの勝利によって議会は力を得た。本当の革命が始まるのである。新しい国家作りが始まり、貴族や王室に対する復讐も始まる。
事実バスティーユでの死者よりも、その後の権力闘争で亡くなった人間の数の方がはるかに多いのである。だが、ロベスピエールが言うように、それでも絶対王制の元で亡くなった人よりも、革命期に亡くなった人のほうがまだ少ないのだ。さらに、それは戦争で亡くなる人よりも少ないのである(という話を聞いたのだが本当だろうか?)。

5年後…。
アランは海が見える小高い丘で、畑仕事に精を出していた。辺りの野原一面に花が咲き、照りつける日差しで汗ばむ陽気になっている。
五年の年月が彼の顔に少なからず刻みつけられている。
そして海に突き出した丘の先端には、母親と妹のディアンヌの墓が並んでたっている。

海風がさわやかな昼下がり。
と、そこへ一台の馬車がやって来る。
馬車はアランのいる畑の前で止まり、中から夫婦連れのような二人が降りてきた。
「おーい、アラン。アラン班長」
遠くにいたアランはそう呼ばれて振り返った。班長…今となっては遠い話だ。
「私だ、ベルナールだ」
馬車から降りてきた男は彼に親しげに呼びかけた。

「よう、久しぶりだな」
アランは懐かしい客人に軽く右手を上げ、愛想よく答えた。
ベルナールが妻のロザリーを伴って、アランの所を訪ねて来たのだ。
五年の間に彼らもすっかり落ち着いた夫婦になっている。
「バスティーユ以来だからもう5年だ。探したよ、ずいぶん。なんだってバスティーユが落ちた後、だまって消えたんだ?」

「ここにゃあ、おふくろと妹の墓があってな…。前々からいずれはここに戻るつもりだったしな…」
アランの妹はある意味では身分制度の犠牲になって死んだ。だから彼は新しいフランスが生まれ変わる戦いに身を投じたのだ。
だが、皮肉にも、その自由への戦いは、彼のかけがえのない友を、部下を奪っていった。

そして、アランの脳裏に強烈に焼き付いた、一人の女性の生きざま。尊敬という言葉だけでは言い表せられない複雑な思いが、バスティーユ以後のアランの心に常に引っ掛かっていた。戦いは何も生み出さない。彼はその後の革命の醜さを、その時、本能的に感じ取っていたのだ。
それでも戦いの泥沼の底に眠るはずの希望を、見いだす気力すら失うほど彼は大事なものを失い、燃え尽きてしまったのかも知れない。

アランは見晴らしのいい丘にたっている、母親と妹の墓を見やった。
「そっくりだ、アラン。オスカルとアンドレの墓も、ああしてアラスの丘にならんでたっている」
ベルナールはディアンヌたちの墓を見ながら言った。
「そうか…考えようによっちゃ、幸せな二人だったな…革命がたどったその後の醜さを知らずに死んだのだから…」
アランはそう言って、自分を慰めた。…言葉とは裏腹に、傷は完全に癒えてはいない。

強いオスカルを望んだアラン。そしてまるで彼らの望んだ通りの強さを示して散って行ったオスカル。彼女はアランの理想通りの勇気を見せたのだ。
だが、アランは今になって彼女を戦わせ、死なせてしまった責任を感じている。…彼の本当の気持ちはオスカルを守りたかったのだ。

1789年10月5日。相変わらずの食糧不足に、女たちはパンを求めて雨の中、ベルサイユへ向かった。同調した男たちも含めて6千人にも及ぶ群衆が押しかけ、窮地に立たされたアントワネットは単身、バルコニーに出て、彼らに対し深々とお辞儀をする。
危険をも省みずに進み出たその気高い態度に民衆は怒りを忘れ、王室は一応事なきを得た。
だが、頭を下げたとは言え、アントワネットは心の中で、革命など認めてはいなかったのだ。その後、国王一家はそのままパリのチュイルリー宮殿に移されることになった。

王家と同じく貴族の立場はますます危なくなる。
ポリニャック夫人をはじめ、王妃を取り巻いていた貴族たちはほとんど外国へ逃げて行ったのだ。
その頃、フェルゼンはフランスの革命騒ぎに心を痛めていた。愛する女性の力になるのは今しかない。彼は今は亡き親友、オスカルに呼びかけた。
「私に勇気を…!」と。
そして彼だけがアントワネットの元へ戻っていくのだ。

1791年6月20日、アントワネットを救い出したい一心のフェルゼンが国王一家の逃亡計画を実行する。
この彼の情熱がやがてアントワネットたちを決定的な窮地へ追い込む結果となる事は今はまだ知る由もない。
綿密に組まれた段取りをこなし、彼にとっても命をかけた逃亡劇。
だが、逃亡途中の町で国王は、いきなりフェルゼンにここで別れようと言い出した。

アントワネットとフェルゼンは一瞬、心が凍りついた。もし、ここで別れてしまえば、この先で何か起きた場合、永遠の別れになってしまう。いや、今が永遠の別れの予感。
だが国王にすれば、万一の事態にそなえて、外国人のフェルゼンを危険な逃亡計画にこれ以上巻き込みたくない一心だったのだ。いや、この土壇場に来て、男のプライドを守ろうとしたのかも知れない。
誰しも、妻の愛人に借りは作りたくはない。

ルイ16世の決然たる態度にフェルゼンには反論するすべはなかった。
彼は絶望の淵に立たされた心境だった。
「お気をつけられて…。私はあなたの友情を永久に忘れないでしょう。おそらく王妃も同じだと思います」
国王はフェルゼンの心を知ってか知らずか、おかまいなくとぼけたまま礼を言った。アントワネットはただ事の成り行きに黙って耐えるだけであった。
「どうか…ご無事で」
フェルゼンはそれ以上、別れの言葉を言えなかった。
アントワネットにしてもそうである。

フェルゼンの後ろ姿は、彼が涙していることを物語っていた。
だが、それでおしまいなのである。口に出して言えない日陰の恋である。
…これが二人の永遠の別れであった。そして、逃亡計画は見事に失敗。
ヴァレンヌの町で正体をあばかれた国王一家は、そのままパリへ連行された。

民衆の憎しみを一身に受けた、3日間にわたる恐怖の旅だった。
パリにようやく帰ってきた時には、アントワネットの美しいブロンドは老婆のような白髪になっていた。
そして国王一家が祖国フランスを捨てようとしたことは、民衆の心から王室への思いを完全に捨てさせ、ついに王室は裁かれる者となってしまうのだ。

1792年8月、国王一家はタンプル塔に移された。同年9月、国民議会に代わって国民公会が誕生し、王政は廃止され、フランスは共和国となることを宣言した。
国王を裁く裁判は、サン・ジュスト、ロベスピエールなどによる国民主権の主張や、共和制にとって国王の存在があまりにも危険であるという発言を受けて、361票対360票、たった1票の差でルイ16世の死刑が確定した(という劇的な投票も本当なのだろうか?)。

共和国作りに彼らも命をかけている。自らも新しい時代を作り出す道具としてせめぎ合っているのだ。
一見、冷たい支配者として描かれているロベスピエール、サン・ジュストらもまた、名脇役であった。もちろん、作品の視点を変えれば主役級であったことは間違いない。

1793年1月21日、ルイ16世は断頭台の露と消えた。
夫を失った後、アントワネットは息子ルイ・シャルルとも引き離されるのである。
民間兵に「あなたたちも人の親でしょう」と食い下がるアントワネット。
しかし彼らもかつて重い税金に苦しみ、貧しさの中で子供を亡くしたのだ。
とは言え、母との別れはシャルルにとっても不幸である。いずれにせよ子供には罪はないのだが、弱い者に常に犠牲はかかってくるのだ。

アランたち三人は丘を下り、やがて海岸へと歩いて来ていた。
強い海風にあおられて高い波が砂浜へ押し寄せていた。
アランはベルナールから空白の5年間の出来事を聞かされ、少しうんざりしていた。
「王妃様にそれからしばらくして死刑の判決が下りました…」
ロザリーもこれまでのことを回想しながら言った。
だが、アランはアントワネットのことにはまったく興味がなかった。
どちらかと言えば、彼から大事なものを奪って言った原因とも言える女の名は聞きたくなかった。

「ベルナール、おまえそんなことを話すためにわざわざ来たのかい?」
アランは口をはさんだ。
だが、ベルナールがアランの元を訪ねた本当の理由は、オスカルとアンドレの事を、二人のもっとも身近にいたアランに詳しく聞きたかったからだと説明した。

ベルナールは、今、書きかけている「フランス革命小史」で二人のことにぜひとも触れたいと思っていたのだ。
「じゃあなおさら死刑になるアントワネットの話なんか関係ねえよ…」
あの時のことを思い出すと、訳のわからない喪失感でいらいらする。
「いや、それがあるんだ。もう少しロザリーの話を聞いてくれ」
ベルナールは促した。

ロザリーは再び話し始めた。
彼女はタンプル塔からコンシェルジュリ牢獄へ移された、すでに王妃ではなくカペー夫人という名のアントワネットの身の回りの世話をしていた。
そしてアントワネットはふと、ロザリーがいつか舞踏会でオスカルと一緒にいた少女であることを思い出したのだ。
ロザリーはその時の優しいアントワネットの姿を覚えており、今こうして彼女の世話をすることを買って出たのだった。
「ああ…懐かしい。オスカル…」
アントワネットはオスカルの名を聞いたとたん、眼を輝かせた。
彼女に心から仕え、見守ってくれた今は亡きオスカル。
そういえば、彼女自身の事は未だわからないことがなんと多いことか。アントワネットはロザリーにオスカルのことをたくさん聞かせて欲しいと頼むのだ。

それから毎日のようにロザリーはアントワネットにオスカルの事を言って聞かせた。
「心がやすまります。オスカルに思いを馳せると…あぁ…」
アントワネットの頬は涙で濡れていた。その面もちは少女のように生き生きとしている。
彼女は今は亡きオスカルの、誠実で心優しい人柄を心にありありと思い出していた。
思えばオスカルは不思議な女性だった。女ながら男として振る舞い、一見、氷のような冷静さを持ちながら、なぜか周囲の者を穏やかな気持ちにさせてくれる。
彼女を思い出すだけで温かい気持ちになる者はアントワネットだけではなかっただろう。

1793年10月16日午後0時15分、マリー・アントワネット処刑。

ロザリーは白い化粧紙でできた造花のバラの花を出して来て、アランに見せた。
「これは、最後の日の朝、王妃様が私に下さったものです。独房の中にあった化粧紙でオスカル様に思いを馳せて作られたと…。そしてこう言われたのです」

“ロザリーさん、このバラに色をつけて下さいな、オスカルの好きだった色を”

「そう言われて、あらためてはっとしました。…私、オスカル様がどんな色のバラが好きだったかなんて、…聞いたことがなかったんです」
ロザリーはオスカルの面影を再び思い出し、涙を流した。
「…オスカルは知らねえが…アンドレならきっと…白が好きだって言うぜ…」
アランは短く答えた。
白いバラはアンドレがこよなく愛したオスカルの色、アランはそう感じている。

彼もまた、ロザリーと同じく、オスカルとアンドレの事を思い出していた。
激動の時代を駆け抜けて行った、あまりにも純粋な二人のことを…。
思い出すと、今でも声が詰まりそうだ。

「じゃあ…このままのほうがいいですね」
ロザリーはバラの花を握り締めて、これでやっと満足した気分になった。
「ああ…それがいい…」

アンドレが白いバラがいいと言ったら、オスカルもそれでいいと思うはずだ。
オスカルはきっとそんな女性だろう…。
アランはそれ以上何も言えなかった。

海岸は波の音だけが響きわたり、明るい日差しの中を、何事もないようにカモメが風を受けて自由に空を舞っていた。
 それからしばらくして、ロベスピエールとサン・ジュストも政権争いに敗れ、処刑される。
そしてさらに10余年後の1810年、アントワネットの死後、祖国に帰り着いたフェルゼンは、民衆を憎む心冷たい権力者となり、奇しくも逃亡計画が失敗したあの6月20日、民衆の手により虐殺されたという。

−終わり−






つぶやき…むなしい。むなしすぎる。
架空の物語ながら、この最後の脱力感は何だろう。
それがこの解説をはじめたきっかけなのかも知れない。
今となって振り返ってみると、長い年月をかけて語ってきたアニメ・ベルサイユのばら。
自分なりに語ってきたものの、感動と共にやはりむなしいという感情がわき上がってくる。
そして、このような作品を生みだして下さった方々に深く感謝するのである。

又、最後に「オスカルはきっとそんな女性だろう」と書いた。ものすごくあいまいな表現だと自分でも思う。だけど、この「そんな女性」という所をどう受け止めたかは「アニメ・ベルサイユのばら」をご覧になった方々の感じたままにお任せしようと思っている。

注※
今までにもここにも年表や事件がたくさん出てきましたが、歴史の解釈は本によったり諸説によって違います。
ここではアニメの進行がスムーズに行くように一般的な歴史解釈に沿いました。
歴史解釈は奥が深く、諸説を検討するのは有意義な作業でしょうが、このアニメ版解説は史実の追求ではなく「なぜ感動したのか」を重点的に語り進めてきました。
歴史解釈に興味がある方は、ぜひそれぞれの語りやすい場所で研究成果を披露されますようにお願い致します。



2003.9.9.up