×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。


     アニメ版 ベルサイユのばら 徹底解説>HOME

解説 第34話〜第36話


 

色々な物語を持った登場人物たちの思惑が交錯していたストーリー。しかし、ついに人々はそれぞれの道を歩き始めました。

敵味方にわかれていく二人の女たち。

互いに相手の行く道を知りつつ、万感の思いを込めて別れを告げるオスカルとアントワネット。

30数年生きてきたそれぞれの女たちの決意と覚悟が表現されていて、感動ものです。

 

ロベスピエール

 思想のために生きる事。その一例として、アニメ・ロベスピエールの事を少し語っておこう。彼は物語前半から王室を批判し、貧しい民衆の味方として登場している。普通ならおいしい役。

ところが、彼は回を重ねるごとに冷たい、計算高い男になって行く。世の中を改革するためにこつこつと計画を立て、自分の理想を掲げ、目的のために突き進むのだ。

 本来、苦しむ人を放っておけない優しい男である。彼はまんべんなく「貧しい者」全体を助けたいのだ。そのためには、まず権力を握り、支配者とならねばならない。

これは一見、正しい考え方。だが、理想や思想に命をかける者は、悲しいかな、肉親や恋人への愛情を犠牲にしてしまうのだ。

思想に命をかけ、さらに恋愛に命をかけるという事は本来、両立しない。

もし民衆の中に、自分の命より大切な人がいれば、彼は思想よりその人を守ることに終始するはずである。だが、彼は理想・目的のために鉄のような決意を持っている。人間的な感情は二の次にしないと、完璧な計画がだめになるのだ。

 ロベスピエールは個人的な利益を捨て、時には暴動を扇動し、支配者となるべく自分のプランを実行して行く。彼にとって、自由・平等を求める民衆の熱望は、目的のための道具に過ぎない。そして自分自身すら彼の理想実現のための道具なのだ。

 アニメではかつて、テロリストが「フランスばんざい」と言って死んでいる。テロという過激な方法を取る人間すら、崇高な思想のために動いているのだ。思想に命をかける者を描く上で最も危険なこと、それは思想のためという大義名分を掲げて、人の命を奪うことが正当化されることである。

 

緊迫した事態

 少し話は戻る。湧き上がる民衆の力に危惧を抱いた王室と貴族たち。彼らは治安維持の名の元に武力による弾圧を始める。その命を受けたのがオスカル。

しかし彼女はことごとく命令を拒否。

それでも事態は深刻化し、さらに武力弾圧にかかる側近たちとブイエ将軍。

 まるで気持ちを確かめるかのように、ブイエ将軍に呼び出されるオスカル。そしてアンドレはアランの機転で、単身、将軍の所へ向かうオスカルの後ろから追いかける。オスカルに「何だ?」と不審がられて、彼はたじたじしている。おや、これは早くも尻に敷かれているらしい。

 さて、議場を占拠する平民議員たちを武力で排除するように、オスカルに命令するブイエ将軍。彼女は即座に拒否、兵士たちもアランの決意に促されて命令を拒否し、逮捕されてしまう。オスカルには武器もない民衆だけではなく、部下の命までその肩にかかってくるのだ。まして議場では議員たちが危機にさらされている。

 議場へ駆けつけたオスカルは反逆罪をも恐れず、両手を広げて貴族の横暴に対し手を広げ、非暴力で対抗。その真に迫った命がけの抗議に、対峙したジャローデルは兵を引くのだ。彼は武人として潔いだけではない。オスカルを愛する男として、卑怯者になりたくなかったのだ。彼も又、アンドレと同じように、深く静かな瞳をオスカルに向けている。

 

激しくなる嵐

 だか、事はそれだけでは収まらない。今や違う道を歩み始めた父と娘。軍人として立派に育った娘と、王家に忠実に使えて来た父。だがお互いの信念のために真っ向から対立し、譲れない。

そしてそこへ割って入る彼女の恋人。

一本気なジャルジェ将軍は最初、オスカルの反逆に腹を立てていたのだが、アンドレの割り込みで、怒りの矛先は「身分違いの求婚者」に向けられる。もう何に腹が立っているのかわからなくなったジャルジェ将軍。ここまで娘を愛する男は他にいまい、だが大貴族の娘を奪っていく平民の男を想像しただけでもめまいがする。

 どう見ても引かれあっている二人に、彼はめでたいのかめでたくないのか大混乱。二人とも成敗するとは言ったものの、振り上げた剣を下ろせるはずもない。

どうあれ、父はこの二人には負けたのだ。

 幸い、アントワネットの配慮で事は収まるが、命拾いしたオスカルは素直に喜べない。彼女を救ったアントワネットに対し、もうすぐ反旗をひるがえす己の姿が見えているのだ。それにアランたちを助け出すまでは、アンドレに自分の気持ちを伝えたくても、今はそれどころではないのだ。

 

つかのまの…

 何かを隠しているとアンドレに指摘されるオスカル。もうアンドレには彼女の病気はわかっていたのだろう。だが、何も答えないオスカル。彼を振り返るオスカルの目は切なく、恋人を見つめる女の顔である。だがその顔を、アンドレの視力ではもう見ることも出来ない。…悲恋である。

アンドレも又、オスカルには目の悪化を黙っているのだ。…この二人はお互いを心配させまいとして、自分の事を伏せている。

 自分のことを振り向く暇も無いオスカル。パリの状況は悪化し、彼女の肩にかかる責任は、二人のささやかな時間すら奪っている。

 

サンジュスト光と闇

 ロベスピエールに影のように付きまとう男。世の中の変化をせっかちに求め、目的のためには手段を選ばないテロリスト。

だが、彼の言う「人は誰も自分のことしか考えていない」という考えは、ロベスピエールの非情さと同じものなのだ。彼はロベスピエールの負の部分である。

そして、人に対して誠意を尽くそうとしているオスカルとは正反対の立場。

 オスカルとサン・ジュストは光と影である。むしろ真っ向から対立している二人は、「光と闇」と言った方が良いだろう。

 

今生の別れ

 夕暮れのベルサイユ宮殿の噴水。

二人の女がそれぞれの思いを胸に居る。

オスカルは仕える者としてかなわぬ願いを女主人に打ち明ける。民衆の声を武力で押さえ込むことは横暴に過ぎない。湧き上がるような民衆たちの熱望は、新しい時代へのスタートなのだ。

 人の世の前進に武力は必要ではないはず。彼女は自分の信じた道を貫くために、女主人に軍の撤退を願い出る。だが、進言むなしくアントワネットは戦いすら辞さない決意を語るのみ。女王として、武力に訴えてでも権威を守る覚悟なのだ。それが女王という運命に生きる女の選んだ道。

 すでにたもとを分かった二人。

あふれた涙が風にちぎられ、キラキラと飛んでいく。

オスカルの涙は、自分の選んだ道がやがてアントワネットを滅ぼす事を知っていたのだろうか…。そしてその時になっても、彼女を助けられない自分の命の期限をオスカルは知っていたのだろう。

 オールヴォアール…永遠の別れである。

 

つぶやき…アニメ・ベルばらを見ていると、オスカルとて絶対ではない現実を感じます。時代のうねりの中に巻き込まれ、やがて忘れ去られる人々。

オスカルは決して英雄ではなく、自分の時代の中で必死に生きていた、人々の中の一人に過ぎませんでした。

 
1998.12.31.up