アニメ版 ベルサイユのばら 徹底解説>HOME
★第1話 オスカル!バラの運命 |
(1755年12月25日〜1769年春・オスカル満13歳) 第一話だから張り切って解説しよう。 一言で言うと、オスカルが大人になる日。彼女の迷い、搖れる心が描かれている。 アントワネットの護衛を父から命じられ「女のお守りは嫌だ」と言う彼女も女の子なのに、ちょっとつっぱってる。 ばあやの言う「お嬢様」も黙認しているし、アニメ独自のエピソードを見る限りではオスカルは初めから自分が女ということを意識しているようだ。 また「恐いのか?女に負けることが」とか「女と言えども武人。こうするより他に名誉を守る方法がない」などのセリフから、彼女は武人としての誇りも持っている。だが、その誇りは、武力は一体何のために身につけたものなのか、オスカル自身はわかっていたのだろうか。 「夢中で走っている時はいい…。だが急に立ち止まって足元を見た時、ふと自分はどこに行こうとしているのかと思う…」 誰にでもよくある事だが、ふとした時に自分とは何か、自分は何を求めているのか、ついつい日常のことに忙殺されて考える余裕がない。 いや、わざと考えないのかも知れない。「何のため」を考えていたらきりがない、まず「どうやって」生きるかが先になる。 ばあやの「男と女の戦い」は、オスカルがついに心の中でその生き方を決めなければならないという事のたとえだろう。子供時代が終われば、何事もあいまいではすまされない。大人としての責任が、跡継ぎである彼女の両肩にかかってくるのだ。 どうやらオスカルは真面目人間。夢中で走るというセリフでもわかるように、何か打ち込むことがあったら、一生懸命になってしまう。 そう、誰でも夢中になっている時は余計なことを考えなくていいのだ。 彼女は男だから女だからというより、武人としての「人を守りたい」気持ちを持っているらしい。でも体は女としてやがて母や回りの貴婦人のように「子供を産んだり育てたり」する機能があるし、自分は将来、一体何をすべきか、彼女、色々考えたと思う。 男として生きるのは、確かに自己実現しやすい有利な立場だが、そのかわりに女としての自然な機能を使わずに終わってしまう。家の跡取りとして生きるという事は、それだけまじめな彼女にすれば「どっちかに徹底する」覚悟がいる事だったのだろう。 特に男として生きることは、ジャルジェ家の跡継ぎの枠内とはいえ自分で生き方を切り開いて行ける立場だけに、一体何のために自分の力を尽くすのか、…今から羽ばたいていく大人の世界で、これからの人生で彼女が冷静に探さなければならない事なのだ。 だから結局オスカルは、男や女の性別での生き方で悩んでいるだけではなくて、大人として歩み始めたときの不安な気持ち、前例もない人生のスタートの不安な気持ちを表していたように思う。 が、この迷いは一体何だったの?と言いたくなるような、その後の第二話からの展開ではあるのだが…。 今のオスカルには未来に起こる波乱の人生の事など知る由もないだろうが、「自分がどこへ向かっている」のかは、これから彼女が自分で答えを見つけていかなければならないのだ。 又、演出の特徴と言うのか「父と子」の激しいぶつかり合いも前半らしさ。激しいのはジャルジェ家の血なのだろうか。パパはもしや星一徹?と見間違うほど。殊に前期は背景に炎メラメラ雷バリバリで、いかにもスポ根物が入っている感じ。 さて肝心のアンドレとは仲が良さそうで、ほぼ対等な立場と言ったところ。 彼はいきなり、オスカルと同格の扱いで登場し、明るい人柄と言えばそうだが最初はどうもコミカルに描かれている。彼は8話での回想シーンに俺が6歳お前が5歳とあるので、原作よりも幼くしてジャルジェ家に引き取られているようだ。 だが第一話から主役級だけあって、ここで既にオスカルを女として見ており、彼女の迷いを知っている。 でも、わざわざ殴りあいまでして、彼女の心の炎・生きている情熱のようなものを引っ張り出してくるあたりは「一見、冷ややかだか、心の仲では炎が燃えている」という原作オスカルの激しい性格を踏襲しているのだろうか。 彼にすればほのかな恋心ぐらいだろうが、普通、好きな女の子を殴るかな?と疑問に思う。幼なじみで剣の相手でもあるし、そのまま友情を引っ張っているのか、あるいは彼もある程度オスカルを男として見なさなければと彼女に気を使っているのか。 「今からでも遅くない、女に戻るなら今だぞ」なんて言う、後から思えば真に迫った忠告だった。でもオスカルが選んだ道なのだから、アンドレは以降この件については何も触れることはない。 「行くぞ、アンドレ」なんて、真新しい白い軍服を着て声まで男っぽいオスカルに、アンドレは思わず涙ぐむ。 本当は女としてもかわいいのに、精いっぱいガンバッてしまう姿に感動してしまった様子。白い軍服が汚れなき花嫁衣装のようによく似合っていて、どんな展開になるのか期待しまくりの第1話だった。 ちなみにアンドレ同様、ジェローデルもレギュラーで登場している。 ついでに前期のオスカルは顔のアップが多いからしっかり目に焼き付けよう! つぶやき………どうしても二人の殴り合いがしっくりこない、なぜ? 殴り合いって「相手の腕力によって我が身で痛みを感じる、力のぶつかり合い」という野生的な男同士のコミュニケーションだと思う。いや、まるであしたのジョーとかの世界を想像している私は、是非そうであって欲しい。 殴り合いによるコミュニケーションは男同士のものであって、オスカルを女性と捉えている私の頭の中で、アンドレとの殴り合いのシーンががしっくりこないのは「私のオスカルらしさの定義」からはずれているからなんだろうな。 2000.7.14up |